混声合唱組曲 風のうた 中村 千栄子 作詩 大中 恵 作曲 指揮 高瀬 新一郎 ピアノ 遠藤 直子 第43回定期演奏会 Ⅰst STAGE 2012年6月24日(日) 練馬文化センター 大ホール 風のうた るらら 風のうた うたう るらる [春の風] ちらちら きらきら 四国の海は 瀬戸内の海は 幼子(おさなご)のよう・・・・ さっきから あどけない つぶやきを 飽きもせず くり返すーー 小さくてまるい浜の砂利が 波のいたずらに かわいい声をあげるーー 駆けつづけてきた少女の あまく香る うなじのうぶ毛が かすかに波をうつのは やさしい風がくすぐるからかしら うっとりと 砂浜にねて 春の午後 四国の海の 快い風のうた 海と少女の とりとめもない対話 [夏の風] 池の錦鯉が おどるから 黄色いせきれいが はねるから あふれ出る湯が はねるから 溢れでる湯が うたうから だから 赤倉は いい 何もかも 赤倉の夏は 生きている 蝶々がいる 鬼やんまだって 部屋に 飛びこんでくる みんな子ども達のように ぴちぴちとした 自然 すっかんぽに 口をつぼめ あざみを摘んで 竹筒に活けるのは わたし 筧(かけい)の水と 長いこと おしゃべりしてる それは だあれ? 杉の木立で ぶらんこしてる あれは だれ! こっそり あなただけに 教えましょうか それは朝の風 いちばん早起きの お茶目な空の坊やなのよ [秋の風] 月が出て 秋と並んだ 奈良の西の京-- さっき法隆寺で 出会った 味気ない 日本の伝統ーー コンクリートのいえにとじこめられた 仏さんたちの悲しみが ひたひた音を立てる 白い道を ただあるくひたすらに と 浮かび上がった ほんものの奈良 小さくて 大きい 法起寺の三重の塔 こぼれ落ちそうな 寺の建物のかげに ゆったり腰を下ろす この充実感 荒れはてた池にうつる 月の横顔 水煙を静かにゆする 風の子守うた 秋 日本の秋 古い都の秋 [冬の風] なぜ うめくのか なぜ あえぐのか 故郷は 風の音で いっぱいだった その中で育まれたはずなのに すっかり忘れていた この風のざわめき さび鉄色の嘆き‐― ぐみの 枯葉色のしわぶきーー 仲間といっしょに 立ちつくしながら ひどく孤独な たもぎの木たちが 田んぼのどろ水をなめなめ 米山おろしを その横っつらにうけ それでもその泣っつらで 伏し目がちに足元の 一点を見つめる なんてけなげな 越後の冬 なぜ うめくのか なぜ あえぐのか ひどく 人間的な この 冬のうた 耐えに 耐えたものの あきらめのうたか それとも 生きることのあかしのうたか なんて けなげな このなる風のうた 風のうた るらら 風のうた うたう るらる ※ 本番を前に・・・楽屋にて・・・ ※ 2012年春の 『フェルマータ』 から引用・・・ 混声合唱組曲 風のうた 中村 千栄子 作詩 大中 恵 作曲 指揮 高瀬 新一郎 ピアノ 遠藤 直子 第43回定期演奏会 Ⅰst STAGE 2012年6月24日(日) 練馬文化センター 大ホール